ー だからこそ ー の選択
最後に倒れ込んだその唇は
衣装を映したように色を変えていた。
まさに死闘。
芸術性は残しつつ
急遽変更したクワド5本を跳び、滑り切った羽生さん。
「何が正解かわからない」
傍らで掲げたー I'm always happy ー
いつでも前向きな方がいいものね。
精一杯のパワーも送るしね。
しかしこのところ彼への仕打ちが目に余り、悲観的にならざるを得ない。
J3さん、あなたには愛する人がいないのですか?
注目されていた明確な検証動画も残念ながら援護射撃となっていないようだ。
25歳の心身はせめぎ合いの中にあり、解決には急を要するというのに。
メディアの報じ方や在り方についての問題も常に付きまとい
今回も口裏を合わせたような見出しが躍っている。
”大差”
そう大きく掲げれば、詳細を知らない人は額面通り受け入れる。
他方面では自分だってそんな事ばかりのはずだ。
TV番組では佐野さんが、羽生さんの踏切をクリーンで素晴らしいと説明してくれ嬉しかったが
その短さではコメンテーターにも視聴者にもほぼ響かないと思われ残念でならない。
ただ同番組内で、あまり意味のない解説をされていた方が語ったネイサンのルーティンが 心に引っかかった。
試合後、彼は自宅で人生について考えると言うのだ。
常々ネイサンのビジネスライクに感じる姿勢は彼のバックグラウンドにあるのだろうと考えていたが、決め手はこれだと腑に落ちた。
私は羽生さんの情報さえまともに追えていないくらいなので、他選手の諸事情などは殆ど知らないけれど、ネイサンについてこれだけはと意訳して残っていたのが
「 データ・医学のいずれに進んでもフィギュアスケートで得た知識を活かしたい。ISU用のデータから何らかの形でスポーツ選手を助け、フィギュアスケートの人生を歩みたい 」
「この先大会のチャンスは5本の指で足りるぐらいだから毎回の出場を大事にする 」
"大事にする"
この意味合いは個々に違うはずだが
きっと私が大事にして欲しいものとネイサンのそれは根底から違う。
「楽曲を抱きしめて演じたオトナル」 長久保カメラマンはそう表現した。
そのように感じる事がなければフィギュアを観る意味は私にはない。
感情を喚起しないものがいかに数字を得ようと、まるで関心が持てないのだ。
そして前述の ”試合後人生を考える”のはとても大事なキーだと思うけれど、そこから
ー であれば ー と考えるか
ー だからこそ ー と考えるかで
姿勢は全く違って行き、支持する側も変わってくるんだろう。
ジスランは4Aより5回転の方が容易と考えており、それでも
「ユヅは5回転より4Aをやりたいんだと思う」とオリンピックchで発言している。
4Aは王様のジャンプと考える羽生さんが
ー だからこそ ーと導き出した選択がそこに見えるようだ。
これはセカンドキャリアに国状がどこまで影響しているのかという事や個人的な事情もあり
あくまでどう受け止められるかで、選手達に何らかの責を負わせようというような話ではない。
わかりやすくネイサンを持ち出しもしたが
彼の技術も認められるべきもので非難したいわけでもなく、
むしろ私は彼のセカンドキャリアに関心を寄せている。
また羽生さん自身も「ネイサンが素晴らしい演技をしなければ学ぶ事ができなかった。強くなろうと思う事もできなかった。ネイサンにすごく感謝している」と語っていた。
以前より度々綴ってきたように、大体の事は運営次第だ。
見出した明るい兆しに裏切られ続け、嘆くしかないような現状では
羽生さん引退後のフィギュア界を応援し続けられる気力は多くの人に残っていないだろう。
彼が自分の演技を振り返った言葉は、ルールが曖昧にされている部分を浮き彫りにする。
「ルッツはすごいきれいに決まったんですけど、やっぱりセットポジション長いですし」
「この採点方法自体が細かいミスを続ければ続けるほど、差はどんどんどんどん開いていきますし」
その羽生さん自身、混迷の中にあったファイナル。
こちらも苦しやもどかしさやあらゆる感情に溺れそうで
何かを投げ出してしまいたいような気持ちにもかられた。
でもすぐに鎮めて対峙しなければならない。
それはEXが楽しみなものから切ないものへと静かに変わりつつあるから。
選ばれたプログラムは語られた理由から離れ
エピローグが始まったように感じるから。
勝手で間違った感じ方でしかないか、
本当にエピローグであるのなら、思いがけず長く楽しい期間となってくれればいいな。
そんな事を思い、久々のビールマンに歓喜し
今季GPFは幕を閉じた。
少しだけ息をついたら、また頑張ろう。
BIGGEST ENERGYを送らなきゃ。
だからWixの4Aも総合点を更新して描き直した。
こんな感じのもの、何か見てくれてるといいな。
ソチの前を思い返せばそういった事は侮れない気がしている。
駿くんはロミジュリを演じたFSに於いて4Lzを含むジャンプをすべて降り、世界歴代最高得点で優勝。
今年の元旦に彼がOriginを一節滑った事などブログに綴ったけれど、
驚くほどの成長ぶりに大きな希望を抱かせてもらった。
胸に刻まれた阿部修英ディレクターの
羽生さんに向けた言葉を最後に。
「高みは誰かに立たせてもらうのではなく自ら立つもの」
「1度の負けがいくらでも烙印になる現代、戦い続ける人は本当に稀有」
前面に立ち、総身に傷を負いながら歩みを止めない。
それが彼
羽生結弦だから。
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