軋み

  

 


World前後、職場は揺れていた。

 



私の身の回りの事など、自分で消化すべき話ばかりで

書き留めるまでもないのだけれど


今回は心身にかなり影響があったので

その記録と思考の整理も兼ねて綴りたいと思う。

 

 

 

 

 

少し遡り 年明けしばらくした辺りで

古株の人が、ひと月の間も置かず退職した。

 

本人からは鬱を発症しているような話があり

引き留める事は叶わなかったとの説明を受けたが

本音は別にあるようだ。

 

 

後に替わりの要員が加わったものの

上司が都合良く解釈した期待感からの人選であったため

予想通り ほどなく退職。

 

私も含め、業務内容を指導した側には疲ればかりが積み上がった。

 

 

 

 

そののち、間を置かず

同部署の一人が喘息で救急車を呼び、ごく短期の入院をする事となる。

 

 

 

命が脅かされるこの状況下、懸命に出来得る限りの対策をして

同じ病に対峙する人が多いのは周知のところだろう。

家族も罹患しないよう細心の注意を払い、大変な日々が続いている事は

様々に伝えられている。

 

 

 

しかし、彼女は違った。

 

 

当人以外の誰も、そして今に至るまで職場に喫煙者はおらず

喘息に良くないからと皆に禁煙を勧められていたが、これに応じる事はなく

喫煙を続けてきたのだ。

 

お酒は欠かさないとか、朝までゲームをしたとかいった事も自ら話し

一般的には何かと不安を覚えそうな100㎏を優に超える身体であっても

食に臆する事もなく、健康という概念を捨てているように思えた。

 

 

 

以前 寝坊で遅刻した時は、悠然と笑いながらやって来て

一言詫びるでもなかったし

それ以外でも急に休む事がしばしばあったけれど

 

かけた負担には、誰かに諭されたらしく儀礼的なひとことが一度あったきり

あとは全て何事もなかったかのように振舞う。

 

 

 

それでも、昨春から人員に余裕のない体制が続いているこの会社では

他部署からの応援も難しく

どうにかして欠員分をカバーしなければ仕事が立ち行かない。

 

それは当然のように、そして殆どそれに触れる事もないまま

日々は過ぎて行った。

 

 

しかし上述した彼女自身のごく短い入院に続き、彼女の夫が入院する事態となり

勤務当日になっての欠勤が度重なっていく。

 

 

 

 

そして遂に、彼女以外の件も含めた仕事を補ってきた私の

心身への負担がボーダーラインを越えてしまったのは

 

不安な状況であっても開催されたなら見守ろうとしていた

Worldが始まってすぐの事だ。

 

 

 

まだライン際にあったのは、彼女が何度目かの欠勤をした日。

 

 

運が悪いとでも言うしかないが、息つく暇がない忙しさとなったその日を

何とか乗り切ったものの、ボロボロに疲弊しきった私は

 

心待ちにしていたさとこちゃんらの演技までどうしても持たず

頭痛もあり、倒れ込むように寝入ってしまった。

 

 

 

その夜、ふとした感覚に起き上がったものの間に合わず 一面に広がったのは

少し前に書いた辺りからひとまず治まっていた鼻血で

再びちらちらと起きていたさなかの出来事だった。

 

 

ふらつく身体でシーツ等一式を洗濯し

なんとか翌日も出勤。

 

 

 

 

その二日後、朝一番に出勤した私に待っていたのは

その時間になってまたしてもの、彼女の欠勤だ。

 

色々事情はあるにせよ、それぞれに抱えるものはあり

こちらも心身の余力は使い果たしている。

 

 

 

すぐさま上記とは別の上司に連絡中

またズタボロになる一日が繰り返されるのかと震撼した時

耐性のボーダーラインが吹き飛び

 

私は十数年ぶりの過呼吸に襲われた。

 

 

 

「○○君が行くはずだから…!」

職務に関しできる手筈を打った電話先の上司もうろたえ

続けて何か言っている。

 

私自身も予想しない展開にどうする事も出来ず

ただただ苦しい中で息をしようともがいているその時

 

アルバイトの大学生が息せき切って飛び込んできた。

 

 

 

彼が来なければ、そして様々に

労りやら思いやりがしみじみと伝わる言葉をかけてくれて

サポートする行動をしてくれなければ、一体どうなったのか。

 

 

 

その日そんな中でさえ

残業となってしまったフォトショでの処理も

 

「自分がやっておきますから、今日はゆっくり休んで」と

さっと手を伸ばしてくれた彼は

卒業までの期限付きで勤務している立場だ。

 

 

 

 

私は感謝する事しかできない上に

混乱する世の中に追い込んでしまった

若い世代への申し訳なさも募るばかりで

 

今の職場に至るまでは、当たり前のようにやり取りされていた助け合いの精神が

何故かここにはなく

一番若い この彼からもらった思いやりが心に染み入る。

 

 

 

 

それでも職務内容に想い入れはあり

少し先の契約満了まで、できる限りの事はしたいと思うが

 

あまりの多忙さと理不尽さに

時々ちぎれそうになる自分がいる。

 

 

 

 

 

 

 

全くもって長くなってしまうけれど

話を欠勤続きの彼女へと戻したい。

 

 

 

Black Lives Matter を掲げ、世界が大きく揺れていた頃

(それは殆ど解決していないけれども)

 

ある日そこから話が流れついた先がディズニーランドで

彼女は大好きだから園の再開が待ちきれないと言った。

 

 

夢の国と言われるその場では、現実として深刻な雇用問題が起きており

キャストなどから幾度か提訴されてきたはずだ。

 

そこへ話が及んだ際

「好きなんだから、別にいーの!!」

目を逸らさず、強く言い切った彼女とは

相容れないかもしれないと感じた事を思い出す。

 

 

 

 

また、昨秋に不祥事を起こして辞めた社員の件を綴ったが

この際も彼女は 「仲が良かったのにショック!」と前置きし

 

耳をそばだてて聞いたのであろう、辞めた社員と会社側とのやり取りを

こと細かく、幾度も話していた。

 

 

 

聞こえるような場で話をする会社側も大いに問題ではあるし

不祥事を起こした人が悪いのは当然なのかもしれないが

 

仲が良くて ショックな状態であると言いながら、まわり中に詳細を話す彼女には

言いようのない不信感と不快感が膨らんでいった。

 

 

 

 

 

しかし今、そして今回の件で

私自身も身体への不安が増してしまった中でも、心を鎮め

 

名目上休職となり、近いうち離職へ進むだろうという彼女に

思いやりを持って向き合わなければならない。 

 



心がざわついたまま、こうして書き綴る

人間ができていない私には

 

少し時間が必要だけれど。




 


 


 


国家間の争いに翻弄されてきた経験を知ってから

機会がある度その言動を追ってきたのは イラン出身のサヘル・ローズ。

 

 

 

彼女は、事実として犯罪となるような心底辛い仕打ちも受けているが

(一番つらかったであろうこの件について彼女が触れたのは、私が知る限り一度だけだ)

それを経てもなお、広く平和な世界を呼びかける行動に繋げている。

 


その崇高な精神は 

並大抵ではない自己犠牲を払い、彼女を育てた養母から受け継がれた。

 


「戦争は両方が被害者で、勝ち負けでもないし、正でも悪でもない」

養母が語ったこの言葉は、ごく身近で小さい摩擦にも通じる。

 

― 正義は人の数だけあり その立場に従わざるを得ない現実もある ―

加害側にいた人の告白には、そう受け止めたサヘル。

 

 

 

 

深刻さを増すミャンマー情勢を目で追いながら

私は危害を加える動きに目をこらす事が多い。

 


有名な看守と囚人の実験( 真偽は不明だが)のように、心理が変化しているのか

目で追う限り、動きにためらいを感じる事はないけれど

そこには本来の意志と葛藤する表情が、まだ多く残っているのかもしれない。

 

 

 

サヘルは言う。

「その手に握るのは武器ではなく、人の手であったり」

 

バンクシーを語る上で欠かせない作品でも

武器に代え、兵士に持たせたのは花束だった。

 

 

 

 

 


人の手に、その心に

まず留め置くものは何かを考える。

 


 





新疆ウイグル自治区の問題から、アメリカは まだ先の話としながら

“ 北京オリンピックを同盟国と共にボイコットする選択肢も排除しない ”という考えを示し


囁かれてきた懸念が現実味を帯びてきた感があるものの

同盟国である日本は、静観しており姿勢は変わらないと強調した。


どの時代にも困難が伴うとは言え、国を問わず選手達は

何の因果かと嘆きたくもなるだろう。

 


「これからどう世界の情勢が変わっていくか分からないが」

そうインタビューで触れた羽生さんは、その内容などからも

北京五輪への積極的な参加意思はないようだと見られている。





 




今の立場で加わるメダルは

あと幾つだろう。