結晶

腕を振り下ろした時のぐらつきに続いて不安定な右脚に

緊張なのか氷の硬度によるものか、判断が付かないままフリーの演技が始まる。 


いずれにしても穏やかではない気持ちを 一瞬で払拭する滑り出しからの4Lo。

もはやどうにでもコントロールできるかの如く、彼は着氷した。 



ー きっと大方の予想通り、彼は大差で優勝するのだろう ー 



流麗に時は流れ、本領が示される展開を経て

最終的には予想通りの結果が告げられる。 



望まないスパイスを最後に加えられ

光に変化は見えなかったけれど。 




ひたすら怪我したくないと思い、試合とは違う緊張感があったと試合後に明かした彼。 

「やっといけるなって思ってうれしいのと、こうやって日本の会場で滑るのがどれだけ格別か」


表彰式前のインタビューで潤んでいたように見えた目は

透明さはそのままで、眩いばかりに大きくなっていく結晶を思わせた。 




「全く関係ないところですごい礼儀正しかったりだとか 、人として尊敬できる方」と

きひらちゃんが複数箇所で話していたけれど 

彼は控える女子の表彰式に思い至り、レッドカーペットのたわみも直していた。 


エイモズ選手は「一世一代のチャンピオン」と評し 

サドフスキー選手は「ユヅルはスケートの神様」と語る。 


羽生さんをリスペクトする声は数え切れない。 


言葉を続けるロマンくん。 

「彼のスケートに対する貢献は大きい」




同様の言葉をそこかしこで何度聞いてきた事だろう。 



それを勘案する様子が感じ難い運営を訝しく思うのはおかしな事か。 


相好を崩すに至らないような状況は残念でならず、歓びも語ろうにも歯切れが悪くなる

「歓び」の対義となるのは「懐疑」だという話を耳にし、この事だと思ったものだ。





覗かせて頂いた先のブロガーさん達からは、相通ずる想いが溢れ出ていて

勝手にですが幸せを有難くお裾分けして頂きました。 


うんうんと大きく頷いては風邪のせいで咳込み、涙ぐんだけれど

涙は咳込む苦しさからだけじゃなかった。 



急に冷え込んで来たこの数日も、振り返ればふんわり温かい。


ファイナルもみんなで嬉し涙を流せますように。 

静かに祈る。




ブライアンは滾る彼に代り、力強く言い放った。

「ここから真っ向勝負をしていく」







それにしてもだ。 Originの終盤、いつも泣きたくなるのは何故だろう。 

いつか迎えるそのシーズン。 演じるのがOriginであればと、無意識に思う自分がいる。 


立ち返るのが人間の性なら 最後にその起源を演じるのは自然な事なのかもしれない。






さて、NHK杯が終わって1週間以上経つのに、

Jr.の録画は未だ千葉百音ちゃんの部分しか見ておらず、申し訳なく後ろめたいのだが... 


百音ちゃんは、"ほっぺギュー" の、あの子。 

その後もしっかりスケートを続けていて

言葉の端々に賢さが滲み出る素敵な少女に成長していた。



賢いと言えば、先般 

陛下への祝辞の秀逸さに 「聡明」との声が挙がっていた芦田愛菜さん。 


どうでもいい胸の内を話させてもらえれば、彼女からは羽生さんに通ずる性質も感じ

付き合うなら彼女のような人がいいのではとずっと思っていた。 


老若男女は問わないけれど互いの想いを交わすには、やはりそういった事が大切と考えているが

傍らで、羽生さんの望みとは裏腹になかなかそういった形に進むのは難しいだろうとも思う。 


セカンドキャリアについての綴り直しが続き、ふと思い出したわけだが

お二方にとっては実に余計なお世話で申し訳ない事だ。 


けれどきっとお誕生日には多数そんな話題ものぼるだろう。 

ご本人はファイナルまっしぐらであっても。